TIPS

細毛・硬毛・クセ毛 髪質別に最適な pH と薬剤処方の考え方

はじめに:髪質ごとに“開かせるべきキューティクルの幅”と“pH設計のシナリオ”が違う

ヘアカラーやケミカル施術の成功は、pHと薬剤の“浸透・反応設計” で8割決まります。
特にカラー剤・パーマ剤・縮毛矯正・ブリーチなどは、
髪を“どれだけ開かせて、どの速度で閉じるか”のプロデュース技術 と言い換えられます。

髪の等電点は pH 4.5〜5.5付近(弱酸性領域)。
ここが髪が一番安定し、膨潤しにくく、ツヤも出やすいゾーン です。
しかし!
• クセ毛は膨潤しやすい → アルカリに敏感
• 硬毛は浸透しにくい → 高pHを設計しないと反応不足
• 細毛は開きすぎる → 高pHだと崩れる

つまり “最適pHは固定じゃない” ということです。

  1. 細毛の薬剤設計:pHは低め・反応は優しく・速度は速い

髪の特徴
• キューティクルが薄く、薬剤で開きやすい
• 反応が“速く出る”
• ツヤより“ダメージの影響”が大きく見えやすい

施術のポイント

項目 最適な考え方
pH設計 できるだけ 弱酸性〜中性寄り(5.5〜7.5) で浸透優先
オキシ濃度 2〜4.5%中心(明度よりツヤと安全性)
アルカリ成分 可能な限り最小限
補助成分 ケラチン・CMC類・オイル・バッファー剤をアシストに
反応設計 “開かせすぎない・反応は短時間で完結”

提案例
• 酸性カラー or 微アルカリカラー
• 7Lv前後でも白髪が馴染むツヤMIX調和カラー
• ブリーチは根元リタッチのみ or 極細ハイライトのみ
• 膨潤を抑えるpHバッファー処方

細毛は “高pHでぐっと反応させる”ではなく、
“低pHでそっと情報を入れる”と一番仕上がる です。

  1. 硬毛の薬剤設計:pHは高め・浸透のゲートを作る・色は濃くしっかり

髪の特徴
• 直毛・太毛・黒髪が多い
• キューティクルが硬く開きにくい
• 発色もパーマも“出にくい”

施術のポイント

項目 最適な考え方
pH設計 反応ゲートを作るため 9.0〜10.0付近 のアルカリ設計も許容
オキシ濃度 4.5〜6%中心(明度設計も両立)
浸透設計 アルカリ+アンモニア or モノエタノールアミン(膨潤ドア設計)
反応設計 しっかり反応させ→その後 酸性シャンプーで素早く閉じる
補助成分 うるおい補填と色の定着ストーリーを必ず入れる

提案例
• アルカリカラー濃度強め 6〜10Lv
• “アッシュ単品NG”ではなく
発色のためにメイン使いOK(配合は濃くしっかり)
• ブリーチ前処理でpHを上げてゲートメイク
• 退色後色が濁らないブラウンベースのMIX処方

硬毛は“pHを上げないと何も起こらない” が前提。
反応後を設計しないとパサつくので、
“強く開く → しっかり入る → 速く閉じる → ツヤ処理へ” がゴールです。

  1. クセ毛の薬剤設計:極端なアルカリは使わない・膨潤制御がすべて

髪の特徴
• もともとタンパク変性や乾燥で広がりやすい
• アルカリだけでキューティクルが過剰に膨れる
• 濁色・赤み出現・ツヤ消失が起こりやすい

施術のポイント

項目 最適な考え方
pH設計 できるだけ 5.5〜8.0 の弱酸性〜低アルカリで反応をコントロール
反応ドア設計 “アルカリで開かせる”より
浸透性成分で押し広げるドアを作る(膨潤を最小限に)
薬剤選定 酸性カラー / 低アルカリカラー / CMC+オイル処方カラー
処理設計 施術後は酸性シャンプー・pH調整トリートメントで必ず閉じる
縮毛併用 カラーと同日に行う場合 → 酸性縮毛 or 低pHストレート剤 で設計

提案例
• フェイスラインのフェード設計で広がり防止
• 退色後の赤み抑制のため
バイオレット or ブルーをバッファー配合
• スタイリングが楽になる光反射×弱酸pH設計
• クセを活かす時でもツヤ反射色を主役設計

クセ毛のカラーは
“色を変えに来てる”だけじゃなく
“膨潤ストレスを抑えに来てる” という心理ゴールがあります。

  1. 3つの処方に共通する黄金ルール
    1. 髪の等電点(4.5〜5.5)で仕上げる設計は必須
    2. カラー直後のツヤより“退色後の調和”を設計
    3. 高pHを使ったら、必ず酸で閉じる
    4. pHの高低だけでデザインせず、浸透ルートを作る
    5. “ダメージさせない設計=顧客が安心できる設計”として言語化して伝える

美容院は“色と質感の研究所”であると同時に
“不安を除去し安心シグナルを与える場所” です。

まとめ

髪質 pHの考え方 施術のゴール
細毛 低pHでそっと入れる 開かせない・濁らせない・ツヤキープ
硬毛 高pHでゲートを作る しっかり開く→しっかり入る→素早く閉じる
クセ毛 膨潤の制御を優先 色よりpHコントロールが主役、酸で仕上げる

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【監修クリニック・アクセス情報】

LOTTA CUCCI – ロッタクッチ (美容院)

髪質改善・ヘアカラーに特化した技術を提供し、豊富な施術経験をもつスタイリストが在籍するサロン。

最新の薬剤選定と髪質診断を基に、お客様一人ひとりの髪の状態を見極めた施術を行っています。

住所:東京都渋谷区神宮前3-18-15 テラスサイドビル1階

TEL:090 1048 6699

営業時間:10:00~18:30

定休日:年中無休

アクセス:

・表参道駅 徒歩6分

・明治神宮前駅 徒歩5分

・表参道ヒルズ 徒歩5分

落ち着いた空間でマンツーマンの施術を中心に行い、髪の悩みを丁寧にカウンセリング。

初めての方でも安心して相談できる“信頼性の高いサロン”として定評があります。

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【記事監修】井上将之(LOTTA CUCCI – ロッタクッチ)

ヘアカラー・髪質改善技術を専門とし、これまで多くのお客様の髪の悩み改善に携わってきたスタイリスト。

髪のダメージ理論、薬剤知識、毛髪診断に基づく「根拠ある施術」を重視し、個々の髪質に合わせた最適な提案を行う。

美容現場で培った豊富な経験をもとに、

科学的根拠(Evidence) × 実務経験(Experience) × 専門性(Expertise)

を軸とした信頼性の高い情報を発信しています。